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平安女流文学シリーズ 1「蜻蛉日記」前編

自分を偽る、自分の欲望にウソをつく、それを生活の中でやり続けると恐らく人間は壊れる。「私の夢は白馬の王子様に迎えに来て頂いて、お城で幸せに暮らす事!」などと夢を見るまでは良い。夢が叶っていないとすれば、その状態を「不如意」という。
不如意はいにしえから文学のテーマだ。「古事記」で最も輝いている登場人物は不如意な処遇ばかりを受け続けた、日本武尊命(やまとたけるのみこと)なのだから…
いきなり漠然とした神学論議をしてしまったが、「蜻蛉日記」という平安時代の文章作品、これのテーマが「不如意」なのだ。夢が実現してくれない、願望がちっともかなわない、かなわないことが不満で、心には煩悶と苦しみと嫉妬と、環境を変えたい、逃げ出したい欲望ばかり。 

私の願望ですか? もう少し背の君が私を愛して、大切にしてくれる事ですよ。しかし、それには、あの殿は浮気に過ぎるのです…
せめて、子供がもう1人生まれていたなら話は違ったでしょうに。恨めしやあら恨めしや。
***********************************
いや、なんだかお腹一杯になりますね。「蜻蛉日記」は、日記と銘打ってはいるが一種の私小説でして、作中の「私」イコール主人公です。女主人公と対になる男主人公は、夫である藤原兼家(ふじわら かねいえ)で、このことが実に彼女の人生を威圧的に左右しています。
要するに、兼家なくして「蜻蛉日記」が書かれる事はなかった。
兼家が、もし「私」を本妻として手厚く遇していたら、これまた書かれる事はなかった…現実はどうかと言えば、背の君とは別居。訪れはなんとなく、ぽつ、ぽつと。息子が1人いるから、まあ様子を見るか、との了見なのがありありと分かる。
…もうこうなったら別れようか(くっ、他に愛人作ったというウワサがここまで!)
…私の姉や兄弟までが、この夫婦仲はやばい、と心配しているんですけど(うっ、惨め)
…でも、息子はどうなるのか。そう、最大の心配はそれ(あんな人でも父親ですものね。それも名門貴族なのだ)
ため息をついて、訪れた背の君に、せめて日頃のうっぷんを歌ではらそう。

ももくさに みだれてみゆる花の色は  おく白露の わくにやあるらん。


現代人からは、遠回しすぎて分かりませんが、庭の前栽の花の如く乱れる私の心、それは、その上におく白露、そう、あなた様のお心が分けへだてするためです…「湧く」と「分ける」をかけている歌です。歌には歌でお返しするのが貴族のたしなみ。もちろん背の君は悠々とお返事。

身の秋を 思ひみだるる花のうへに   内の心は いへばさらなり

花を分けへだてなどするどころか、私の心は、言うに言えないくらいに深い思いがあるのです、と。
…ここで私なんぞは思うのです。平安の夫婦は、嫉妬遊びでお芝居するのが、一種のガス抜きだったのではと。本当に相手に対してむかっとなるのを、歌を考えて飾るコトバを考えてムカムカを紛らわせ、夫婦関係を穏やかにしようという生活の知恵。夫も、本当に妻の独占欲につきあっていたら体がいくつあっても足りません。「あなたって、ホント浮気で困るわ」「いやいやいや、そんなことはないって~」芝居と知りつつ家庭の平和のために、妻はすねて夫は汗をかいてなだめるのです。

家庭の平和…それは現代人とて優先しようとするものです。
しかし、冒頭にも書いたように基本的に「蜻蛉日記」の「私」は夢が叶わなくて不如意を嘆いているのです。だから、現状を変えたい。何かを変えたら背の君が私をこの世で一番大切にしてくれるかも…「私」は夢を見ています。が、一方で醒めています。その醒めた認識は、兼家が摂政関白を目指す門閥の一員である現状から来ています。

青年貴族にとって重要なのは、娘を産んだ妻…「源氏物語」でもうかがえるセオリーです。娘は、天皇の後宮に入れるべき手駒だからです。
「蜻蛉日記」の最初の方では、「私」には子供がいないという焦りがほの見えますが、中盤を過ぎると諦念の境地に達して、息子の道綱を立派にすることに心を砕こうとします。しかし、その境地に至るまでには彼女は、背の君に愛されたい、との欲望を燃やし続けるしかなかった。自分の欲望にウソをつけなかったのです。その表れの行動がどんなモノだったかは、後編に続きます。




 *画像は、女性写真家のおおくぼひさこさんの作品です。


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